【第14話】「ギター購入大作戦」(ギターを選ぶ)
(左のバナーは私が行ったハリウッド店のサイトです。)
(2001.1.7現在、GUITAR CENTERのサイトを覗いたのですが、なんと!!私の買ったティラー314が当時のままの写真で壁にかかっています。次のページに飛んでください。写真というかQuickTimeですが上段、右から1本目です。)www.vintageguitars.net/tour/acousticrms3.shtml)
店に着いたけど、周りは街灯が少なく店全体の外観が分からない。
入り口はせまい。ガラスのドア1枚である。(エーッ。こんな小さいの?と思ったが、とんでもない。店内は広い!)
ドアを開けて店内に入った。目の前に「アコースティックギター」という看板が見えた。左手はDs関連、右手はエレキ関連である。
もちろん、アコースティックの方に向かい足を進めた。
「ジャストモーメント!」入り口に座った若い男に呼び止められた。
「ん?」とした顔で振り向くと、5cm四方のダンボール紙で作った札を渡された。札を見ると「Van Halen」と赤マジックで書いてある!
「あのー、俺ハードロック野郎じゃ無いんだけど…。もっと違うミュージシャンの札をちょうだい。」
…なんて言える訳はない。英語力が無いのである。
で、笑ってその札を受け取り奥に進もうとしたら、「ヘィ!」と又呼び止められた。
「カバンを置いていけ!」との事。ははーん、この札はカバン預かり札なのだ。カバンを肩から降ろしその若い兄ちゃんに預けた。帰りに札を見せればカバンを返してやるとの事。万引き防止のようである。
後で「しまった!」と思ったのだが、ここでカバンをそっくり預けたばっかりに、当初予定していた記念写真が撮れなかったのである。
でもって、ギターセンターの写真も陳列されていたギターの写真も何も撮れていないのです。
せめてカメラはカバンから取り出しておいたらよかった…。写真を期待されていた読者の皆さんには誠にすまない思いです。
その代わりと言っちゃ何ですが、ギターセンターの見取り図を紹介します。
図は、ホテルに帰ってすぐ手帳にメモったものです。アコースティックのコーナーしか書いていませんが、これと同じ位のスペースでエレキコーナーがあります。
入口は狭かったけど、中は広々です。
例えば図にあるマーティンの部屋は12畳ほどありマーティンギターが20本ばかし、壁にかけてあります。この尺度で図をご覧ください。
日本の狭い楽器屋さんとはスケールが違います。
で、その部屋ごとに5人くらい座れる木のベンチが置いてあります。
さて、ようやくアコースティックギターコーナーに足を踏み入れ「ギブソンの小型オールド、ブルースギター…」なんてつぶやきながら物色してたら、ナントあるではないですか!
GibsonのL03!’50年モノ。価格は1,750$(約19.3万円)ええんじゃない!ちょっと予算オーバーだけど…。
手前の部屋をグルッと見渡し、観音扉を開けて奥の部屋へ。
「おーおおう!!!!」ギブソンのオールドが勢ぞろいだぁ!
J45、J50の程度のいいものが燦然と並んでいる。20本くらいあっただろうか。どれも’40〜’50年モノである。
しかもコンディションがすこぶる良さそう。それもそのはず、2ケ所にリペアーコーナーがあって、職人さんが待機している。値札を見る。どれも2,500$以上である。(約27〜30万円)
右の写真は、1944年製J45。(3,400$約37万円)
うーん、ちょっと…どころか、かなりの予算オーバー!
Gibsonオールドコーナーから左手に階段がついていて、そっちのほうに行くとレアものビンテージギターが壁にかけてある。マーティンからギブソン…。おぉ、これは日本では滅多にお目にかかれない。
あっ、あのロバートジョンソンが抱えていたGibsonL1もあるでは無いか!これは2,000$程度(約22万円)なら思い切って買って帰ろうじゃないか!「欲しい、欲しい…うん!」
値札を見た。「ん?」 もう一度値札を見た。「ゲゲーッ!22,250$!(約245万円)」
あかん、こっちは目の毒や。もう一度手前の部屋に戻ろう。(実は、ここまでで すでに1時間費やしています。)
もう、最初目にしたGibsonL03しか無いや。でも音はどうなんだろう?「試奏させてくれ」ってどう言えばいいんだろ。
「メイ アイ トライ イット?」とでも言えばいいのだろうか?とか思いながら、回りを見ると、客はそれぞれ勝手に壁からギターを取り外し、ベンチに座りガンガン弾いているではないか!
おぉ、勝手に弾いていいんだ!店員さんの許可は要らないのだ!なんと太っ腹!
こうなりゃ、英語力は要らない。彼らに見習い、壁からギターを外して試し弾きをする。ギターを変え10本くらい弾きまくった。女性のお客はチューニングを下げ、ジョニミッチェルよろしく爪弾いている。子供は親に連れられタカミネのギターをポロンとやっている。
さて、L03である。うーん枯れた音である。ペグなんか錆付いているけど、味わいのある音を出してくれる。
いやぁ、決まりだな。そう思い、細部をチェックする。
ネックの裏側は(カポでついた傷であろうか?)ガタガタである。ま、握りは気にならないし、いいか!
サイドもウエザークラックがあるけど、ま、これも良し。
トップは…。あれぇ、トップには15cmほどのクラックが2ケ所入っている。良く見たけどウエザークラックでは無く、板割れである…。「あぁ、これは無いわ。どうしよう?買おうか?1,750$だぜ?どうする?」L03を爪弾きながら30分ほど自問自答した。
「よし!やめた!」「あれっ?やめるの?」という声も聞こえなくは無かったが、やめた。
あぁ、やっぱ明日サンタモニカに行こう!
そう思い、最後にラリビーとテイラーのギターコーナーを覗いた。
冷静に眺めると、そこそこの価格帯のギターが並んでいるでは無いか!
ラリビーのギターなんて1,300$である。(日本じゃ割引価格でも20万円チョイする)
テイラーも安い。1,000$を切る値段からある。
ちょいと試奏だーい。ラリビー、テイラーコーナーにある20本ばかしのギターを手当たり次第弾いた。
途中で若い男性客が友達と来て、「テイラーのギターって弾きやすいよな」みたいな事を言ってブルースのフレーズを弾き出した。
「ん?キーはEか?」俺は、そのリードフレーズに合わせるようにEのブルースコードをカッティングしてやった。
「トケ タテ キーン!」おぉ、のってきよった。「ズズ チャチャ ズン ズン」カッティングを続ける。
「タテタ タテタ パキーン…」お互いベンチで背中合わせ。言葉は通じなくてもブルースのセッションは続く…。
2まわりほどブルースコードを回しただろうか?「次は、俺がソロ弾く番だよな。どう考えても…」左手を7フレットに移動しはじめたところで。。。
「いいねぇ。このギター」なんてギター野郎は友達と話しはじめ、演奏を止めてしまった。
お〜〜い!!!!!!!!!!!!!!`@@'
俺もリード弾かせてくれ〜ぃ!
オメーらアメリカ人は、思いやりがないぞぉ。自己中心だぞぉ。「気配り」するという事ができないのか!この左手はどうしたらいいんだぁ!7フレから9フレに向かおうとしていたこの優しい日本人の気持ちを踏みにじるつもりか〜!
と文句を言いたいが言えない。英語力が無いのである。
しかし、彼とのセッションで弾いていたTaylor(テイラー)314が、すこぶる「ええ感じ」で鳴るのです。
何んちゅーの、OLDのGIBSONみたいにチョイとびびりながら…。
「おぉ、ええやん。」値段は…。819.99$(約9万円)
「うおぉ、バッチりやん。決めたぁ!」
と、あっけなくGIBSONのブルースギターを忘れテイラー314を手に歩き出した…。
「メイ アイ ヘルプ ユー?」うまいタイミングで店員が寄って来てくれた。
「アイ ウォント ジス ギター。バッ、ハウ……?アイ ドンツ ノウ」なんて言うと、
店員は「オーライ。まかしときな。」って言ってギターを取り上げカウンターに向かった。
「OK。イッツ ウイズ ハードケース?」と言うと、「いや、別売りだ。」と言う。
「心配するな。いいケースがある。」と言ってギターケースのコーナーに連れて行ってくれた。
「Taylor」とロゴされたケースが置いてある。「これかい?」って尋ねると、「それはやめておけ。値段が高い。それよりもこっちのケースがお勧めさ。」とSKBというブランドのケースを勧めてくれた。値段はテイラーの1/3、99.99$である。(約1万円)
しかし、ギターにしろケースにしろ、○○○.99$っていう価格のつけ方が「ト○ザ△ス」を想像させて、おもしろい。
そういう事で、当初の思惑とまるで違うテイラーのギターを購入してしまったのである。
(ケース込み、TAX込み総額995.88$約11万円)
店に入って3時間後、俺はテイラー314を片手にぶらさげ、店員に「こいつ、3日後に日本に連れて帰るんだ!」と言った。
「オー・グレイト!可愛がってやってくれ。」店員はそう言って送り出してくれた。
出口で「Van Halen」のカードとバッグを引き換えた。
ガードマンに車を頼み、ライブハウス行きなんてすっかり忘れてタクシーに乗り込んだ。
アメリカ娘を強奪したような、そんな気持ちの高ぶりを感じながらホテルへと向かったのである。