【第5話】港町ブルース(シアトル)その2
ライブハウスJAZZ ALLEYはホテルから歩いて2〜3分といったところか。
シアトル初日の夜はファーストショーに間に合わず、仕方なく街のレストランに食事に出かけた。
道すがら、エレアコとバイオリンのじいさん二人が演奏していた。イギリスかアイリッシュの民謡風の演奏であった。
あいにくカメラを持っていなかったので、写真はない。
アメリカの街では、こういう風に比較的年配の方のストリートパフォーマンスが多い。若い者のパフォーマンスは滞在中、結局見られなかった。
もっとダウンタウンの方へ行けば、若い人の演奏もあるのだろうか?どうなのだろう…。
感じたことは、これらのストリートミュージックが「町に溶け込んでいる」ということである。自己主張や自己満足の域をはるかに越えて、町の風景として違和感なく存在している。そんな感じがした。決して耳障りでなく、決して派手派手しくなく…。こんな風に音楽が景色と混ざり合っていれば、気持ちいいものである。
さて、ライブハウスである。2日めの夜に「つきあうよ」と言ってくれたA氏とともに、JAZZ ALLEYに向かった。
店に着くと、長蛇の列。何やら雰囲気がおかしい。正装したカップルが続々とやってくる。
結局、店の入り口で「予約してないからダメ」と入場を断られたのだが、あとで調べると、この日は「CDリリース記念パーティ」と称したバンドのライブショーであった。(JAZZ ALLEYでは次の日の「Michael Wolff And Impure Thoughts」というワールドミュージックJazzを聞いたのだが、このレポートは省略します。)
ただ、言っておきたいのは、プロミュージシャン(私たちが聞きにいった1週間後にはラリーカールトンが予定されていたし、その1週間後にはタジ・マハールがスケジュールにあった。)のライブチャージが10$そこそこなのである。こんな事も考えると、日本の音楽シーンってまだまだ生活とは程遠いところにあるな、と思うのです。仕事帰りに、いいお酒飲んで、いい音楽聴いて、1日の疲れを癒す。そんな環境が日本に訪れるのはいつの日でしょう?(アマチュアのライブでも1500円とられるものな)
さてと、すごかったのは、JAZZ ALLEYに入れなかったので、急遽予定変更して(タクシーに乗って)出かけて行ったブルースハウス「LARRY's」であった。
店に入り「ショーは何時からだ?」と尋ねると「21:30スタート」だと言う。
まだ18:30。あと3時間もある。
結局ライブが始まるまでに店を後にしたのだが、この店で過ごした2時間はまさしくブルースだった。
カウンターに座り、連れのA氏が「俺、バーボン駄目だから」とスコッチ&ウオーター、つまり水割りを注文した。
すると、カウンターのバーテン嬢が「はぁ?」なんて顔している。英語が通じていない訳ではない。水割りという飲み物がわからないのである。少し離れたところに座ってる馴染みの客に「どうしたらいいんだ?」と聞いている。
「スコッチ入れるの?」と言ってグラスにウイスキーを注ぎ、「えっ?次に水?」と言ってハンドポンプで水をジュワーと入れて「おい、氷を入れなきゃ!」って馴染み客に注意されると、「OK!」と言ってクラッシュアイスをその中に山盛り入れた。一連の動作を唖然と眺めていた私たちの前に「ジス・イズ・スコッチ&ウオーター、OK!」と自身満々差しだした時には、「参った!」の一言に尽きた。これって「ウイスキーかき氷」やん。。。
そのあと私は「ベィビーブルースバーガー」をかじりながら、ビールやバーボンを飲んだのだが、酔っ払いというか薬中毒というかすごいジャンキーみたいなおっちゃん達が入れ替わり立ち代わり店に入ってきて…。すごかった。
持っていたバッグはずっと体の前で抱きしめていないと、どうにかなってしまうような異様な雰囲気。(おい、目を合わすなよ。みたいな暗黙の約束事がA氏とのあいだで出来上がるほどであった。)
ホール担当の女性ウェイトレスが親切だったので、なんとか安心して飲み食いしたのだが、圧巻はトイレである。
帰り間際にトイレに行くと、用を足す便器が無い!あるのは小学校の手洗い場みたいな大きなホーロー容器(バスタブみたいなやつ?)がデーンとあって、その上に水道配管が渡してある。(コック付)
「ここで?するの?」どうみても手洗い場である。悩んで悩んだあげく、1個だけある個室の方に入り用を済ましたのだが、このホーローバスタブが用をたすものであるのか、手洗い場であるのかは現地人の姿が見えないので結局わからない。
わからないので、用を済ましたあと、結局手も洗っていない。。。。。どうすれば良かったのだろう?
(今、冷静に考えると、用を済まして流すついでに手を洗う、ということだったのかも知れない。)
そんなこんなで、すごい店だった!
ライブを聞けなかったのは残念であるが、この店で過ごした2時間という時間の中で、ホントのブルースが少しわかったような気がした。