【第9話】サンセットブルース(ロサンゼルス)その2
雑踏のなかに居る。
沢山の人並みの中、一人ぼっちだと知る。
こんな時は、音楽が欲しくなる。
ストリートの出店でラテを注文して、ベンチに座りカップをすする。
カリフォルニアの冷たい風が、コーヒーを一層おいしいものに感じさせてくれる。
今、ギターを持っていれば爪弾き、鼻歌のひとつでも歌えるのに。。。
通りのどこからか、しっとりとしたカントリーバラードが聞こえる。
やさしい男の声だ。しばらく耳をすませ、煙草に火をつけた。
街に音楽が存在している?
存在ではなく共存ではないだろうか?
ふと体に、ふと心に入ってくる、そんな風に何気なく流れる歌が誰かをなぐさめ、誰かを励ましてくれる。
自然なのである。仰々しく構えたり、アピールしたりしない。流行歌とは別の音楽、歌が存在している。
私の国もそうなのだろうか?そうなるのであろうか?
売れんが為の音楽産業。与えられた音楽で満足する日常。
それも大切だろうが、私の国の音楽がもっと身近で、もっと心を動かせてくれるモノになれるのだろうか?
それは、私たちひとりひとりの気持ちの持ちようなのかも知れない。
いい音楽に接するにはあまりにも貧しい環境にあるのではないだろうか?
そんな事を思いながら、コーヒーを飲み終えた。
立ち上がって歩き出した時、いろいろな人の顔がはっきりと見えた。
私は一人ぼっちなんかじゃ無い。