vol 29.朝顔に釣瓶とられて…
「朝顔に 釣瓶(つるべ)とられて 貰ひ水」
この俳句は、皆さんも一度は聴かれた事があるかと思います。
唐突に、何を言い出すんや?と怪訝な顔をしている皆さん、まぁ、聞いてください。
昨日(2002.6.9.)のことです。
この日はワールドカップで日本がロシア相手に、歴史的な初勝利をあげた日であります!!!
いやぁ、稲本のオフサイドすれすれのゴールにしびれたぁ!!!!!!
しかし…、話題はサッカーのことではありません。(笑)
TT.BANDセカンドアルバム(ええ加減に完成させろ)のレコーディングに出向こうと、駐車場に向かった時にその事件は起こったのでした。
ご近所の方に「yo!さん、実は…」
話を聞くと、2〜3日前から、私の車のあたりから「チュンチュン」という鳥の声が聞こえるとのこと。
あたりに鳥がいないのに「チュンチュン」とはおかしい?と思いながらも、私の車のそばを通るたびにチュンチュンと聞こえる。
これは一体何か?とその奥さんは不思議に思い、私の車のまわりをグルグルまわったらしい。
「声はすれども姿は見えぬ。ほんにお前は屁のような。」というフレーズが、奥さんの頭に浮かんだかどうかは知らないが、
えらいもので、その奥さんはついに事実を突き止めたのであった。
いわく、「yo! さんの車のこのあたりに鳥が巣を作っています。中には雛鳥がいます。」との事。
「えーっ!!!!!」
奥さんの言う個所(左写真の→)の奥をのぞいてみた。
すると、なんと!
おっしゃるとおり鳥の巣があるではないか!
ご覧いただけるでしょうか?
右の写真ですが、中には2羽の雛鳥が…
「うわぉ、なんてこったい。オリーブ待ってろ、助けにいくから」というポパイの名セリフが口に出てくるくらい驚いた!
「このまま、車を走らせると雛鳥が飛んで行ってしまいます。どうか、助けてやってください。」
と、モスラの安否を気遣うピーナッツ姉妹のように訴えられると、私も車を出すことができない。逡巡していると、さらに奥さんは、
「ほら、親鳥があそこで、私たちが居なくなるのを待っています。きっと雛にえさを与えに来たのでしょう。」
と、車を出そうとする私をまるで極悪非道の悪人みたいに追い討ちをかけられた。
今日は、レコーディングでギター2本と機材一式を積み込んで行かなければならないんですよ。
なんて事を言えば「まぁ、なんてひどい事を。あなたは命の尊さをどう考えているのですか」なんて説教をされかねない。
仕方なく、私は機材の入ったリュックを背負い、両手にギターをぶら下げ、駅へと向かったのであった。(おかげで、肩はこるわ、腕がしびれるわ…)
ふと見ると、駐車場の片隅に、えさを咥え、雛鳥の安否を気遣い、たたずむ親鳥の姿が見えた。
綺麗な鳥である。(名前は知らない。鳥に詳しい方、教えてください。)
この話をある方にしたら、「朝顔に 釣瓶(つるべ)とられて 貰ひ水 だね。」と言われた。
博識あるお方である。
この俳句は「朝,井戸に水を汲みにいくと釣瓶に朝顔の蔓が巻きついている。むしりとるのも忍びないので隣りの井戸に水をもらいにいったのである。」
という意の江戸時代中期女流俳人・加賀千代女の句である。
巣を作った鳥もさることながら、この句がすっとでてきた御仁もさすがである。
いたく感心したのであった。
私の場合、「雛鳥に 車とられて 電車行き」といったところか。
追伸(2002.6.12.)
早速、読者の方が教えてくださいました。鳥の名前は「セグロセキレイ」だそうです。