vol 5. SJ30まいぎたー
性懲りも無く、ギター紹介第2弾です。このギターはもっと後年に紹介しようと思っていたんですが、今回製作者であるメイペックスジャパンの島野さんから直々のお手紙をいただき、ほっこりとした気分になったので、感謝の意をこめてお送りします。
後半部分の「 」部は島野さんのコメントです。
(製作'95〜'96)
ギターは道具である。消耗品である。と若い頃は思ってたが、歳を重ねるごとに「この先ずっと連れ添ってくれる相棒がほしいなぁ」などと思い始めたのが今から遡ること数年前。
あちこちの楽器屋さんで「連れ添い」になってくれる可愛い娘ちゃんを捜し求め3年…。
もちろん王道と呼ばれるマーティン00028を始めギブソンJ50(もしくはJ45)、ラリビーのシリーズからレイクウッド、テイラー……。あらゆるギターをあちこちの楽器屋さんで試奏したけど何かフンギレなくて。
そんな中、1997年に京都・J楽器店のギターフェアでこのギターSJ30のパンフレットを見かけた。(現物は無かったんです)
何気なく持って帰ったそのパンフをボーッと眺めてたら、ルックスが可愛くなってきてね。美人じゃなく可愛いんだよね。(ラリビーギターは美人である。)
このシモブクレ加減が気に入ったんだけど、可愛いけど性格悪いってのがタマにいるやん。ルックスだけで決めちゃいかん。まだ俺はこのギターを見たことも触ったこともないのだ!
そう思って1年経ち、翌年の1998年、京都・J楽器店のギターフェアに行ったんだ。もちろん初日に…。会場に入ってすぐ探したさ。居たね、焦がれた可愛い娘ちゃんが。
でもいきなり声かけるって恥ずかしいやん。そやから先にマーティンさんやギブソンさんやラリビーさんやテイラーさんとお話して、2時間後に「あのギターもちょっと弾かせて…」なんて言いながら(内心ドキドキ)やっと抱きかかえたんです。
たまげたね。ちゃんと言うこと聞いてくれるんや。初対面の俺に対し…。ルックスだけじゃ無いんだ!音がすごく素直。バランスがいい。ボリュームに嫌味が無い。気にいったぁ!!
そんな訳で「会ってその日に連れ添い」にしてしもたのであります。指板に流れる逆Jのインレイがすごく気に入ってます。「深呼吸」という曲はこのギターで作った初めての曲です。テンションをaddしたオープンコードの響きがすごく綺麗です。
3年つきあって、ちょっとピッキング傷が目立つようになってきました。でもやっぱ可愛いなぁ。ホントは俺みたいに荒い弾き方をする者より、ちゃんとしたテクニック持ってる人に弾かれるべきなんだろうけど…。
日本には良いギター製作者、ギタービルダーが居ます。このギターと出逢いホントそう思います。この連れ添いの出生を知りたく、メイペックス・ジャパン様にメールしたところ下記の返事が返ってきました。
島野さんのお手紙
(前文は省略します)
「もしかキズのないギターを購入されておられるなら、SJ30の2本目のギターです。
この2本目のギターは5本を同時に製作したうちの1本です。
でシリアルが4ならば5本の内の1本でしよう。
当時十字屋さんにフェアー試奏用と、Aランクのギターを2本出荷している気もします。」
「大変恐縮ですが、この程度の記憶しかありません。
ただしこのギターは完全に1人の職人が作成し、
日本では有数のクラッシックギター工房でラッカー塗装をしていますので、
こちらもサウンドには自信があります。」
「デザインもサイズ等のコンセプトも基本は私がやりました。
実はうちの会社はドラムがメインで私はドラムの技術者でもあります。
ですから、変なはなしドラマーがデザインしたギターです。」
「勿論私はドラマーですが、むかしからアコーステックギターも大好きで、
独立する以前の会社はドラムの工場、ギターの工場がありこのころから、
ギターを作成し、販売も手がけたいと考えておりました。」
「今お持ちのギターは私の夢であり、マーチンを目標に、
自分なりの個性的な鳴りを追及した、初期のJ LEEです。
末永くかわいがっていただければ幸いです。乱筆、乱文をお許しください。」
代表取締役 島野
最後の「今お持ちのギターは私の夢であり…」ってのがズンと来る。
一期一会っていうやつですね。何か心やすらぎました。ありがとう島野さん。