vol 8.非常用パンを食う
ふと、棚を見たら数年前に入手した「防災運動会参加賞/パンの缶詰」が目にとまった。
朝寝坊して先ほど起きたところ。
ぼやけた頭のまま、「放っておく・開ける…」を繰り返した結果、開けることに決定した。
寝起きの行動というのは、いつも唐突である。
さて、缶には、なんと親切に缶きりがついている。
それを使いギコギコと開封すると、甘〜い匂いがしてきた。
缶の側面のパンという大きなロゴの下には
SPECIAL BREADと書かれてある。
何がSPECIALなのか?と上のフタを読むと、
小麦粉・卵・イーストなどの馴染みの原材料の他に
レーズン・オレンジピール・ドレンドチェリーなどが
記載されてある。
そうか、フルーティなのである。
非常食といえばカンパンしか食べたことが無いが
カンパンにはドレンドチェリーなどは入っていない。
おおいに期待がもたれる。
しかも、ひげをたくわえたホテルのコック長みたいな
おじさんの後ろにはゴンドラ船が浮かんでいる。
(ちょっと写真では見えませんが…)
おっ、イタリア風味なのか!すばらしい!!感動にむせながらフタを開けた…。
パラフイン紙に包まれたパンを缶から取り出した。
「おぉ、パンである。」あたりまえの事が非常にうれしい。
しかも柔らかい。カンパンでは無く、まさしくパンである。
さすがSPECIAL BREADを名乗るだけの事はある。
パンを裏返す。意味は無いがとりあえず裏返す。
写真に写ってる黒いコゲみたいなものはレーズンである。
あっ、言い忘れてたけどパンの大きさを報告しておきますね。
近くにあった三角定規で測定した結果、
「直径95o」「高さ55o」。結構大きいでしょう?
このくらいの大きさなら、万が一山で遭難しても
1日生存するに十分なボリュームです。
しかも近くを通りがかった野ねずみに
「お前もお腹減ってるだろう。ほれッ」って
ひとカケ与えるくらいの心の余裕が生まれるかもしれない。
このように、緊迫した状態におかれた消費者に対し
「どんな時も、決して人間の心のやさしさを忘れてはいけないよ」と諭しているようで
これまたSPECIAL BREADという名にふさわしい。
さてと、ここまでは食文化研究者として冷静に対応できたが、なにせ朝寝坊して先ほど起きたところ。
もうすぐ昼である。当然お腹が減っている。
マズローの欲求の5段階からしても「食欲求」の方が優先される。。。
缶のほこりを払って裏ぶたを見ると残念ながら、賞味期限を1年近く過ぎている。。。。
……5秒間逡巡した。「何があっても5秒待て」という格言にしたがったのである。
結果、賞味期限と品質保証期限はベツモノである。と勝手な解釈をすることにした。
とりあえず、庭に出て食べよう。庭のほうが安心である。(何が?安心?)
一口かじってみる。うーん、わりとあっさりしている。
(食感のほうは、ちょっとパサついてます。)
昼休みに食べ残したぶどうパンを、
放課後のクラブ活動終わってから、
「お腹減ったなぁ、あぁそういえば食べ残しのぶどうパンがあったな。」と、
カバンの奥から取り出してかじった時のあの感じです。
でも香りと味はフルーティで、ケーキを食べているような感じがしないわけでもない。
イタリアのパンはこういうパンなのであろう。うんうん。
ロメオとジュリエットもきっと放課後に食べていたのだろう。
やたら微笑みかけるコック長を眺めながら、異国イタリアと坊主頭の中学生時代を思い起こさせてくれるパンの缶詰。。。。
こんな奥の深い食べ物が、かつてあったろうか!
やはり、SPECIAL BREADの名に恥じないものであった。
こんなすばらしいモノをどこで手に入れればいいのか?
(又、消防署の運動会に参加しないとダメなのだろうか?)
知ってる方は情報ください。
福岡市中央区にある「徳水株式会社」様が販売者です。商品名パン。